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2007年12月29日

奥さん、今はいてるパンティーください!!





BANKOです





結婚する前の話だから、もう10年ぐらい前の古い話。サンタからもらった、めったに出来ない「経験」のプレゼント。

クリスマス・イブのその日、何の予定もなく一人寂しく仕事場からパチ屋に直行して、コテンパンに負けた夜の話である。

突然の電話のコール音で、コタツから出てしぶしぶ受話器をとった。はい、と応答しても返事がない。イタズラかと不審がりながら、今度は「もしもし、○○ですが」苗字を言ってみる。すると返事があった。若い女性の声だ。

「もしもし、わたしです」

んっ、誰だ?

「ああっ」

と返事しながら考えをめぐらす。昔付き合った事のある誰かからのデートの誘い?かと思いもしたが誰だか分からない。

「知らないなんて言わせませんよ」

えっ、マジで分からない。間違い電話かと思いもしたが、苗字を名乗ったしなー、全神経を脳に集中し記憶をたどるがギブアップ。




明けの明星と・・・





「○○ですが、間違いじゃないですか」と言ってみた。

「○○さんでしょ、下の名前は△△△」

ありぁー、フルネームで知っていやがる。
おまけに口調は、昔の職場の同僚や飲み屋のおねーちゃんとは明らかに違う。
たとえて言うなら、3年半付き合って別れて久しぶりの会話ってな具合。
その間、三井グリーンランドとハウステンボスとスペースワールドに2回づつ、一緒に遊びに行ったみたいな。
映画館で10本映画を見て、泊まりの旅行に3回出かけ、焼肉屋に25回は行ったみたいな。
延べにすると100回ヤッテ(うち車中3回)、一度は堕したみたいな。

フルネームを知っているのは不思議だが、こんな女は知らないと確信し言ってみた。

「どなたですか、間違いだと思うんですが」

「○○さん、ちゃんと分かってるんですからね」

何が分かってんだよ、こっちは全然分からないぞ。おまけに、向こうの受話器からは、赤ん坊が火が付いたように泣く声が聞こえだした。

「あなた毎日電話してくるじゃないですか。そのたび今はいてるパンティーくれって言うじゃないですか。あなた×××で働いてる○○でしょ。」

げっっ、パンティーてなんだ。職場も知ってて、おまけに苗字呼び捨てにしやがった。ひょっとして俺、そんな電話したっけ?

いや、してない。明日が誕生日のキリストに誓って・・・。でも、どうして名前から職場から知ってんだ?誰かが、俺の名前をかたっているのか?

「それに洗濯して干してる下着も泥棒したでしょ。ブラとパンティーを合わせて10枚はなくなってるから。この電話は録音してるし、近所の交番にも届けてるんですからね」

体が震えてきた。廊下においてある電話で話していたので寒さもあるが、それ以上にこの展開のために。赤ん坊は泣き止まない。いくら犯人じゃないと言っても、女はとりあわない。だんだん、ヒステリックになってきてまくし立てる。

しばらくは、俺も興奮して言葉を返していたが、ふと気付いた。犯人が名刺交換よろしく、自分から職場や名前を名乗って事に及ぶ訳がない。この女の理論は破綻している、あるいはカマをかけている。そう気付くと安心して、こちらから一方的に電話を切った。

しかし、録音と交番の話は気になる。女が言った交番に折り返し電話を入れてみた。

事情を話すと、警官は苦笑いしながら「ああ、あの奥さんですね」と言った。「心配ないと思いますけど、本人に確認してこちらから電話しますよ」。警官は災難でしたね、と言いたげにこちらの電話番号を聞いた。




佐賀の乱的霊気あるっす、ここ





とてつもなく長く感じた20分が過ぎ、警官からの電話がかかってきた。事の顛末は要約するとこんなカンジ。

結婚と同時に妊娠・出産したその女は、出産直後にダンナの勤務する会社のかなり大きな社宅に引越しした。

近所づきあいと育児で疲れ果てている時に、イタズラ電話がかかりだし、まもなく下着泥棒の被害も受けるようになった。ダンナに相談しても「警察に被害届けを出せ」と言うだけで無関心状態。逆に仕事で疲れているんだから、そんなことぐらい自分で解決しろ、と怒り出す。

警察に届けたもののイタズラは毎日続く。

神経をすり減らして限界に近づきつつあったクリスマス・イブの日に、グチでも聞いてもらおうと友達に電話した。しかし、間違ってダイヤルしてしまい俺の会社にかけてしまった。すみませんと謝り切ったが、電話に出た男(俺じゃない)の声が、イタズラ電話をしてくる主に似ていた。

時間の経過とともにそれは確信に変わっていった。

リダイヤルして俺の会社にかけなおし、イタズラの主が時々名乗る苗字を使い呼び出しをかける。たまたま、偶然にその苗字が俺の苗字と一緒だった。もう帰りましたよ、と言われたが、ひるまず自宅の電話を聞きだしたらしい。(不用意に自宅の電話番号を教えた奴は、分からなかった)

こうして、その女の中では俺が犯人だという図式が完成した。犯人が本名を名乗る訳はないという、単純な公理を忘れて・・・。

当時は、あんなノイローゼのバカ女にぶち当たって、スゲェー災難だったと思っていました。しかし、二人の子供の親となった今、冷静に振り返ってみると、哀しくなって同情すら覚えます。家庭を犠牲にしてまでも、男は仕事だと思い込んでるダンナ、それを当然と受け止めながら、家庭という社会から閉じた系の中で、育児・近所づきあいの重苦しさに耐えられなくなりつつある自分の状態に悩む、その女。

法や制度が整えられ、男女共同参画社会なんてのが声高に叫ばれて久しいのに、現在と当時の状態は、根っこではさほど変わっているとも思えない今は・・・。


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Posted by imagine at 10:32│Comments(0)テキスト
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